内視鏡の洗浄および消毒は、内視鏡室で働く看護師が担っています。この内視鏡の洗浄・消毒は、絶対に気を抜いてはいけない業務です。実際、内視鏡機器を介して感染事故が起きた事例が報告されています。
消化器内視鏡による感染を引き起こす病原微生物には、細菌では「緑膿菌」「サルモネラ菌」「ヘリコバクターピロリ」「O157」などがあるとされます。緑膿菌は健康な腸内に生息しています。サルモネラ菌は人や動物の消化管に生息する腸内細菌です。ヘリコバクターピロリ、つまりピロリ菌は、胃粘膜上皮に付着して尿素分解酵素を産生し、胃内の尿素を分解してアンモニアを発生させます。O157は毒性が非常に強い、病原性大腸菌の一種です。
内視鏡により、感染するのは細菌だけではありません。ウイルスならば「B型肝炎ウイルス(HBV)」「C型肝炎ウイルス(HCV)」などがあるといいます。真菌では「バイゲル毛芽胞菌」、原虫では「糞線虫」などに感染する可能性があります。
これらの細菌、ウイルス、真菌、そして原虫への感染を引き起こす原因は、不適切な消毒液の使用、内視鏡や処置具の不十分な洗浄です。特にワイヤーを巻いた鉗子類などは洗い残しが起きやすいため、注意が必要です。
また、B型肝炎ウイルスの過去の感染事例では、胃出血の患者に内視鏡スコープを使用し、3ヶ月後に急性B型肝炎に罹患した例が報告されています。こうした感染を避けるためには、適切に器具や機械を消毒すること、しっかり洗浄を行うことを徹底しなければなりません。
内視鏡室で働く看護師は、こうした過去の事例を把握したうえで作業にあたることが大切です。もし今後、こうした内視鏡室で働きたいと考えているなら、内視鏡室の看護師の概要を一読しておくことをおすすめします。